FUN.01
FOREVER FUN x CULTURE
Photo: Mariko Kobayashi
Text&Translation: Ayae Takise
Editor: Taiyo Nagashima
楽しく生きるのは、ラクをするということじゃない。意志と工夫によって、「楽しさ」は生みだせる。チュッパチャプスが掲げる「FOREVER FUN」は、小さい頃純粋に感じた “楽しさ(FUN)” を忘れず、何かに夢中になって生きる全ての人を讃え、共に楽しむための合言葉だ。『FOREVER FUN ZINE』では、そんな合言葉を体現する人の、生の言葉を記録する。
インスタグラムのストーリーなどで使えるARフェイスフィルターが、今多くのクリエーターたちの新たな表現活動の場となっている。第1回は、その領域で早くから注目を集めている・Kuno Fell AsleepとOmega.cの対談。Kuno Fell Asleepによって制作された、チュッパチャプスとのコラボレーションによるインスタグラムのAR フィルターについての話や、2人が眠りを犠牲にしてまで没頭する理由を深ぼった。
FOREVER FUN x CULTURE
「FOREVER FUN」って聞いて、オメガしかいないと思ったんだよね。数少ない日本在住のフィルタークリエイターにして、唯一の友達だから。
嬉しいな。同じ気持ちだよ。
海外ではフィルタークリエイターがインフルエンサーになったり、ハイブランドとコラボする動きがあるけど日本ではまだまだ。だから、友達としてもクリエイターとしても尊敬できるオメガには感謝してるし、いっしょにがんばっていきたくて。
同じトーキョーに住んでいるってことがラッキーだよね。世界は広いから。最初の出会いはインスタグラム。Kunoが僕の作品を見つけてフォローしてくれたんだ。そこから作り方や作品をシェアしあうようになっていった。
僕よりもオメガのほうが早いタイミングでフィルターを公開していて、フォロワーがぐんぐん伸びていたよね。インスタグラムフィルターの制作に一般のクリエイターが参加できるようになったのが昨年のことなんだけど、オメガは早い段階で注目されていて、先を越されたなって(笑)
時代の流れとして、フィルタークリエイターはもっと注目されていくと思う。クノのフォロワーもこれからさらに伸びるよ(笑)
今回、チュッパチャプスといっしょに作ったフィルターは僕の思う「FOREVER FUN」をテーマにしたんだよね。
このフィルター、すごいよ。僕には絶対思いつかない。
自分にとってのFUNって何か考えてみて、まず思い浮かんだのがゲーム。誰でもゲームの主人公になれるような世界をつくってみたくて。口を開けるとそれに反応して3Dキャラクターがジャンプして、チュッパチャプスと盾を持って、ボーナスステージでコインをとりまくる。友達と一緒に並んで楽しむこともできるよ。
ちょっとやってみていい?
ARフィルターを通してキャラクターを操作できるのは新しいチャレンジじゃない?
プログラマーとしてのアドバンテージを使って実現した部分だね。平面的な表現のフィルターが多いから、3Dの世界観を作り込むことも意識してみた。
他の人には絶対できないことをKunoはやってると思う。難しい技術を使っていることを感じさせるのではなく、純粋なオリジナリティがある。これを見るクリエイターは「どうやって作ってるんだ?」と不思議に思うだろうね。きっとKunoにとっては、挑戦して新しい発見をすることが喜びなんだね。
普段はフィルター作りとは別の仕事をやっているっていうところにも共通点があるよね。僕はソフトウェアエンジニアとして働いてて、オメガはインテリアデザイナー。
やってることは全然違うけど、仕事で3Dモデリングもするからフィルターを作る時と同じソフトを使ってるよ。
え、そうなんだ。僕は仕事でもフィルター作りでもプログラミングを使うんだけど、Kuno Fell Asleepとしての作品は仕事と切り離した別人格のもの。仕事から帰って一度寝て、深夜から朝方までをその時間に充ててる。いつも眠いんだけど、その深夜の時間が自分にとって大切なんだ。
僕も同じだよ。帰ってちょっとソファで寝て、起きてからフィルターを作りはじめてるから、Omega.Fell.Asleepだね(笑)。一度短い睡眠をとることで、モードが切り替わるのかも。
でも、普段の仕事との両立は難しくない?
本当にやりたいことにだけエネルギーを使うようになったかな。以前は仕事漬けですべてに120%だったけど、今はいい意味でもっと適切にやってる。自分の中から自然に生まれてくる、「これやったら面白いかも、作りたい!」っていう純粋な感覚が、自主制作のモチベーションになってるよ。
日常的な仕事に制約があるからこそ、遊びたくなるんだよね。僕は合理的で機能ありきな感じも好きだけど、そればかりだとつまらない。制約が多いインテリアの仕事とは逆で、フィルターの世界は本当に自由だから楽しい。
そうやって常識に捉われない感覚を忘れちゃいけないと思う。だから、今回のFOREVER FUNのメッセージにはすごく共感するよ。
社会的に生きる必要はあるけど、それ以外のところで自由を生み出すことは、自分次第の工夫とちょっとの努力でできるよね。
Kunoにとって作品を作るモチベーションは他に何かある?
世界中から反応をもらえることかな。フィルターがダウンロードされた数、コメントやメッセージ、タグ付け、反応がダイレクトに来るのが嬉しい。フィルターって使ってもらって初めて完成するものなのかなって。
なるほど。僕は普段の仕事でもそうだけど、見た目でテクスチャーが分かる楽しさかな。壁紙や家具を見ただけで分かる「ふわふわしてそう」「硬そう」とか…フィルターでもそういうものを大事にしてる。ファッションとコスメにも興味あって、トランスフォーム(変身)する感覚が好きだから、その切り口ももっと掘り下げていきたい。
そういうのって、小さい時に好きだったものが影響してる?
子どもの頃、マスクが好きで集めてたよ。僕の母が生まれたドイツの村にはマスクをつける伝統的なお祭りがあって、それをたくさん壁に飾ってた。Kunoは?
小学校の時から家のパソコンで遊んでた記憶はある。放課後に友達とオンラインチャットやネットゲームをしたり、バーチャル上の部屋をカスタマイズして友達のアバターを招くっていうのが楽しかったな。
遠くにいる人から反応がもらえて嬉しいって感覚は、子どもの頃の経験から来ているのかも。
そう言われると、たしかにそうだね。それでいうと、マスクをつけると別人の気分になるでしょ。オメガは変身することに興味があるんだね。それってどういう感覚なんだろう?
パンドラの箱を開けてくれたね(笑)。僕がドラァグクイーンの格好してるところ、見たことある?
あ…!思い出した!
昔から、別の存在になるという感覚が好きだったんだよ。でも時間をかけてがっつり化粧するのって、すごく厄介だからやめちゃった。ウィッグと髪の生え際の境目とか、細部の美しさを追求し始めたらきりがない。その状態でしばらく過ごさなきゃいけないし。
その感覚がオメガのフィルター作りに繋がっているんだね。
そう。フィルターの世界だったらなんでも完璧に作れるし、誰でも気軽に別の見た目になれる。美を通してアイデンティティの境界を超えていくことに、とにかく惹かれるんだ…この話題、あと2時間はかかるけど大丈夫?(笑)
また今度聞かせてもらおうかな(笑)
この前、これからどんな方向性で作品を作っていきたいかファミレスで話し合ったよね。こういう話を、同じ目線で共有できるのもオメガくらい。
まだ模索中だけど、バーチャルなアプローチが中心になるのは変わらなさそう。
お互い迷ってるよね。フェイスフィルターはどんどん形を変えていくと思うし、技術もプラットフォームも変化するから、流行の賞味期限もすぐに訪れてしまう。
フィルターはリアルタイムで使えるから面白いけど、スマホというデバイスにちょっと飽きたな。もっと印象の強い経験ができる、大きなディスプレイを使った作品を作りたい。
いいね。
デバイスはもちろん、人とテクノロジーの関わり方もきっと変わっていくよね。顔認識技術の精度が高まると、「顔」が個人を特定する上で重要なキーになっていって、プライバシーがどんどんなくなるから、人はいずれみんな変装したくなるんじゃないかな。そこから発展して、たとえばVRジュエリーを身につけて、現実では見えないけどVRグラスをかけたら見ることができる…みたいな世界を想像するとワクワクするね。
それ絶対来るよね。ちょっと怖いところもあるけれど、空想と現実がどんどん混ざっていくとしたら、表現できる領域がどんどん増えていく。やっぱり僕らにとっては楽しみだよね。
今、ふと思ったんだけど、チュッパチャプスを使ってフィルターを作れないかな?スマホでチュッパチャプスを映すと、フレーバーを認識して、コーラの惑星ができたり、パイナップル味は周りにパイナップルが浮かんだり…。
チュッパチャプスを認識するプログラムが組めればできるかも。面白そう!
FOREVER FUN x CULTURE
PROFILE
クリエイティブ・エンジニア。2019年Facebook London主催のSpark AR Hackathon India準優勝。個人制作アプリの総ダウンロード数は10万台を超える。adot / BIRDMAN Inc.にソフトウェアエンジニアとしても所属。
オメガ、別名エイドリアン・シュテッケヴェーは、リアリティとバーチャルリアリティの狭間に存在する断層を探索しています。コンピュータによって製作されるグラフィックを自らの顔、及びインスタグラムのフィルターに施すことで、バーチャル物質を使って様々な実験を試みています。
feat.XXX