FUN.03
FOREVER FUN x MUSIC
Photo: Mariko Kobayashi
Text: Yu-Go Hiragino
Editor: Taiyo Nagashima
楽しく生きるのは、ラクをするということじゃない。意志と工夫によって、「楽しさ」は生みだせる。チュッパチャプスが掲げる「FOREVER FUN」は、小さい頃純粋に感じた “楽しさ(FUN)” を忘れず、何かに夢中になって生きる全ての人を讃え、共に楽しむための合言葉だ。『FOREVER FUN ZINE』では、そんな合言葉を体現する人の、生の言葉を記録する。
第3回は、早耳なリスナーから支持されるシンガーソングライター/トラックメイカーのMomと、彼の楽曲『マスク』でMV監督を務めたフルヤクウト、同い年の2人のトーク。昨年チュッパチャプスとコラボレーションした楽曲『ハッピーニュースペーパー』や、作品に込める思いや姿勢について聞いてみた。
FOREVER FUN x MUSIC
最初の出会いは、僕がネットナンパしたのがきっかけだよね。
そう、ガチのネットナンパだった(笑)。インスタのDMでけっこうな長文送ってきて。
昨日読み返してみたら「ウワッ長い!」て思った(笑)。シンパシー感じまくってるから会おうぜ、みたいな。
改めて思い返すと変な感じ。でも、こいつと会ったら人生おもしろくなりそうだなって感じたのを覚えてる。
ほんとに!? めっちゃうれしい。あの頃も映像をつくっていたけど、全然形になってなかったから「誰?」って感じだろうと思ってた。声かけてよかった。
今も、まだ広く知られていないミュージシャンに声をかけてMVつくるのを続けてるの?
そうだね。映像だけやってるわけではないんだけどね。服屋さん(原宿の「サントニブンノイチ」)でも働いてるし、この間は東京コレクションでランウェイを歩かせてもらったりして、いろんなことに挑戦してるよ。Momはどう? ラッパーって名乗ってないんだよね。
うん、シンガーソングライターって名乗ってる。ラッパーという入り口から聴きにきてもらいたいわけじゃないんだ。誰もやったことのない音楽がやりたいから、何者とも捉えられないような見せ方ができたらいいな。ラップというか、ヒップホップって、今はいろんな分野の音楽に取り入れられる時代になってきてると思う。根っこにカルチャーへの愛やリスペクトがないといけないけどね。
できてると思うよ! ヒップホップは、オラオラっぽいノリの人が多いけど、Momはそういう雰囲気とは違う、ちょうどいい距離感。それがめっちゃ好きで、仲良くなれるって思った理由の1つ。
ヒップホップ以外にロックとかも聴いてきたし、ギター弾き語りの曲もやるし、くるりやナンバーガール、スーパーカーみたいな雰囲気の曲もつくってた。いろいろをヒップホップに絡めて日本語でやる中で、自然とMomのスタイルが固まっていった感覚かな。ヒップホップは個が立ってたほうが絶対おもしろくなる。いろんなノリの人がちょっとずつ増えてきたのはすごくいいことで、強面な人も、ナードな人も、どっちもいていい。
誰かを否定するようなことを言わないで、僕は僕でこういうのをやるよっていう。
そうそう。みんなが自分の主張を持ってるけど、潰し合うことなんてない。僕らの理念だもんね、楽しくやろうよって(笑)。
理念なんて決めてたっけ?(笑) でもそれってまさに今回のテーマの「FOREVER FUN」に当てはまるのかな。
楽しくありたいよ。ただちょけてるだけなのは違うと思ってて。何かに本気になって打ち込んだ先の楽しさを求めてる。自分の熱量を捧げられるもの。僕だったら音楽だし、クウトだったら映像だし。そういう目印を常に自分の中に持っていたいというか。それがないと退屈で死んじゃうって思うから。
やっぱかっこいいな(笑)。こいつ、かっこいいんですよ。こういうとこ好きっす。
(笑)
本気でやってないと意味がないっていうマインドは僕も一緒。あと、楽しさの感じかたが似てる。どうせやるんだったら誰かにちゃんと評価されたいとか、誰かの気持ちを動かしたいとか、そういう気持ちでものを作っているところも親近感を覚えるかな。
クウトもかっこいいよ。いいこと言う。
今のやり取りもそうだけど、お互い素直に褒めあってるよね? 「お前ほんとにやばいって!」って思ったら伝えないともったいないし、抑えられない。もちろん僕も言われたらうれしいし、たとえ本人の意図とは違っても言っちゃう(笑)。それが楽しく続けるポイントのひとつかも。
ほんとにしょっちゅう褒めてくれるよね。家にずっといてほしい(笑)。最高にモチベーション上がりそう。
僕のことももっと褒めてくれていいんだよ?
いろいろ悩むこともあるけど、ポジティブな方に自分を持っていくやりかたって、自分の中に「これ」ってものがあったりする?
やっぱり音楽だと思う。歌を生み出すことで自分の中の均衡を保ってる部分はあるよ。大きな悲しみとか、気持ちが盛り上がる瞬間みたいな、わかりやすい感情の動きだけじゃなくて、生活の中の何気ない違和感を歌詞にしてることが多いかな。自分は少なくとも平熱の状態を切り取りたくて、そこにリアリティが生まれると思ってるから。自分自身そういうものにグッとくるし、今の日本にはそういう音楽が必要なんじゃないかって意識してるかも。
チュッパ チャプスとコラボしてた『ハッピーニュースペーパー』はそういう楽曲だよね。音だけ明るくて、実は歌詞めちゃめちゃシニカルというか、けっこう言っちゃってる。
ちょっと前までサウンド的にドープなもの作りたい時期だったんだけど、そこから変化して、「ポップな曲を作ってみる」という流れの中で生まれたのがこの曲。でも歌詞は最近気になってることをありのまま書いてるね。サウンドでだまくらかしてる。
けっこう批判的な内容じゃない?
ポリティカルなものを扱う意識はないんだけどね。生活の話って思ってる。でも同世代の人たちに対して「ちょっと考えてなさすぎるな」って感じることは多いよ。普段生きている中で疑問を持つ瞬間って普通にあるはずなのに、思考停止して受け入れてる人が多いんじゃないかって。
今日は取材が入ってるからいろいろ喋ってるけど、普段は本当にそういうこと教えてくれないよね(笑)。僕は全部聞きたい派なんだけど。この曲どういうコンセプトで作ってるの? ここってこういう意味? って。でも「え〜」とか言ってかわすじゃん。Momくん的に全部喋らない美学がある感じ?
いや、恥ずかしいのよ(笑)。それに、聴いた人が自分自身で考えて「こういう曲なのかな?」って想像することがすべてだと思うから、口で言ったら歌にする意味ないじゃん。
自分の好きなものに思いっきり打ち込んだり、熱く語ることに対して嘲笑するような風潮って、あるじゃん。
ある。
それは変えないといけないと思う。あ、うそ。自分のことで精一杯だから、世の中変えてやるぜ!っていうスタンスではないんだけど(笑)。でも、少なくとも僕は自分の好きなものにピュアでありたい。
こいつ、やっぱりまじでかっこいいんですよ(笑)。
いやいや(笑)。自分がいいと思ったものをいいと言い合えることが当たり前になるのが理想だよね。あと、もっとディグったほうがいい。服の選び方も、表面的なものがすごく増えてきてる。パンクが好きだからレザーを着ろ!ってことじゃなくて、それを教養として知っておく、というか。
今日のファッションもハマダーだもんね。
※ハマダー:ダウンタウン浜田雅功の若い頃のファッションスタイル、及びそのフォロワーのこと。スカジャンやスタジャン、ルーズに穿いたジーンズ、ロンTの上に半袖Tを重ね着するなどの着こなしが代表的。
そうそう(笑)こういうの知ってたほうが楽しいよね。何となくおしゃれとか、何となくインディーロックっぽいとか、4つ打ち流行ってるから4つ打ちやろうとか。乗っかってやってるだけじゃやっぱり楽しくない。
楽しみ続けていく上で、ブレない芯が必要だよ。僕は映像とか服とかいろんなことに興味を持っちゃうけど、全部真剣に向き合うことだけは貫いてる。
愛やリスペクトがなきゃね。僕はもっと自分の感覚を研ぎ澄ませていきたい。今はピュアにそれができてるけど、これから環境が変わったり、いろんな情報や経験を得て、難しくなっていくこともあるかもしれない。実際に変わってしまう人も見てきたし。でも、なるべくみずみずしくいたい。そういう感受性はFOREVERでいきたいよね。FOREVER FUNっていい言葉だよ。ブレずにやっていこう。
FOREVER FUN x MUSIC
PROFILE
シンガーソングライター/トラックメイカー。
現行の海外ヒップホップシーンとの同時代性を強く感じさせるサウンドコラージュ・リズムアプローチを取り入れつつも、日本人の琴線に触れるメロディラインを重ねたトラック、遊び心のあるワードセンスが散りばめられた内省的で時にオフェンシブなリリックに、オリジナリティが光る。音源制作のみならず、アートワークやMusic Videoの監修もこなし、隅々にまで感度の高さを覗かせる。2018年11月、初の全国流通盤『PLAYGROUND』をリリース。Apple Music NEW ARTISTやタワレコメンに選出され、翌年5月にchelmicoを招き渋谷WWWで開催したリリースパーティを即完させる。
本名"フルヤクウト"とは別に"Sekaiseifukuyameta"として独自の世界観を爆発させる新進気鋭の映像クリエイター。彼の活動は様々でYouTubeチャンネル"airplaneモードにする"の運営、古着屋サントニブンノイチのスタッフ、東京コレクションのランウェイを歩くなど、枠に収まらずマルチに活動している。
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